「日本が人民共和国になる日」と「カエルの楽園」

 この間書店にふと入ったら井沢元彦さんの「日本が人民共和国になる日」という本が目につきました。井沢元彦さんというと週刊ポストで連載している「逆説の日本史」というシリーズが有名で、これはまとめて後で単行本が出て、さらに文庫本が出るという仕掛けになっているのですが、私は文庫本が出ると必ず買って読んでいます。古代から始まって、今や明治期になっていますが、歴史の見方が斬新でとても面白いと思います。特に繰り返し述べられる、「歴史学者の(公的)記録資料偏重は間違っている、権力を持った人、自己弁護をしたい人が記録などいくらでも創作できる。それよりも、当時の客観情勢からこういうことだったはずだと論理的に推論していった方が良い。」「世情言われている定説は、盲目的に信じず、論理的に考察すべきである。」「日本の歴史を縦に貫いているのは怨霊信仰だ。」「日本人が呪縛から離れられないのは言霊信仰だ。」などという考えは、現在の我々がニュースとかいわゆる世論とかに接する時常に心しておかねばならないことであると思います。また、行政を預かる立場からも戒めと考えなければならないことが多いと思いますので、近く対談をしていただこうと思っています。(年末には県庁のホームページでご覧いただけます。)
 その井沢さんが書いた本なので、迷わず買ったのですが、その帯に百田尚樹さんが絶賛しているのを発見しました。その百田尚樹さんの紹介にカエルの楽園の著者という修飾語句があって、見ると隣にその「カエルの楽園」という文庫本があったので、それも買ってしまいました。

 井沢さんの「日本が人民共和国になる日」は原発が地震と津波で壊れて大爆発を起こすが、その大爆発で時空を超えてしまった新聞記者とカメラマンが見た社会は、ちょうど今の北朝鮮のようになった日本の姿で、とんでもなくひどい国になった日本とその原因となった60年安保時代の社会の動きが書かれているのですが、これ以上の詳細はどうぞご自身で。
 日本がとんでもない国になる原因は、今の日本にも多々見られるマスコミや知識人や、その意見に振り回される多くの国民ということで、さすがは「逆説の日本史」の井沢さんと思いました。しかし、井沢さんにしては原発が地震津波で壊れる話や今の北朝鮮の金正恩みたいな独裁者が登場したりと、設定が安易ではないかと思ったのですが、何とこの本は1995年に書かれていることが読み終わったところで分かりました。何という未来予言小説でしょうか。またまた感心しました。

 百田さんのカエルの楽園は、今年の書き下ろしですから、もっと露骨ですが、きれい事を唱える知識人と言霊信仰であえて危険から目をつぶろうとする多くの国民の行動で日本がとても危険な状況にあるんだということが切々と伝わってくる小説でした。
 もとよりカエルの国のおとぎ話風にしつらえてあるのですが、あんまり現実感があり過ぎて、読んでいくうちにあまりの救いのなさに、胸苦しさが募ってまいりました。でも、嫌なことに目を背けていては、言霊信仰に負けるようなものですよね。

 日本がカエルの楽園にならぬよう、又人民共和国にならぬよう、すべての有権者が心しなければならないと思いました。