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仁坂吉伸の思い

いだてん

2020年01月13日

 昨年のNHKの大河ドラマは「いだてん」でありまして、日本人として初めてのオリンピック選手となった金栗四三さんのことを指しての命名ではないかと思います。もっとも、後半の主人公は前回の東京オリンピックの時の立役者田畑政治さんであったと思います。今年はいよいよ2回目の東京オリンピック・パラリンピックの年ですから、その前景気をあおるという意味で、昨年の大河ドラマを「いだてん」にしたのはNHKのヒットであったと思います。ロサンゼルス大会の時の水泳チームを中心とする逸話とか、ベルリン大会の前畑ガンバレとか、1940年の幻の東京オリンピック招致決定のドラマとか、それが戦争により返上を余儀なくされた件とか、中々感動的な場面もあって、後述の理由もあって私はずっと見ていたものですから、よかったと思います。特に1964年の東京オリンピックの開会式の場面など感動させられるものがありましたが。

 しかし、私はそれでも、この大河ドラマは失敗作であったと思います。何故ならば、これが、私のこの番組を今か今かと見続けてきた理由なのですが、東京オリンピックを呼んだ男、和田勇さんの話がすっぽりと落ちているからです。私はオリンピックの感動の3大話を述べよと言われますと、この和田勇さんの献身、ベルリン大会の棒高跳びの西田修平さんと大江季雄さんの友情のメダル、そして前畑がんばれだと思うのですが、実はこの3つとも和歌山県人が絡む話で、かく言う私は、本当にそう信じているのですが、和歌山県知事の手前味噌と言われるおそれがあるのかもしれません。

 ところが、この「いだてん」では、前畑がんばれは出てまいりましたが、後の2つは無視されました。特に和田勇さんへの無視はあまりにもひどいと思います。戦後当時の世界一の記録を持っていたのにオリンピックから排除されていた、古橋廣之進さんら日本の水泳チームが、ついこの前までの敵国アメリカで行われた選手権で大活躍をし、アメリカでも大変な人気を博したことは、敗戦にうちひしがれた日本人への勇気づけにもなったし、アメリカ人のフェアーな精神を物語るいい話だったはずです。しかし、古橋選手、橋爪選手らがこうして大活躍することが当時アメリカで青物チェーンで成功していた和歌山県御坊市出身の和田勇さんの献身があって初めて可能であったのですが、これを「いだてん」は完全に無視しました。この事は高杉良さんの著書「東京にオリンピックを呼んだ男」にも克明に書かれているし、民放が数年前大沢たかおと常盤貴子主演で、「東京にオリンピックを呼んだ男」という立派な番組を放映していることからもよくうかがえます。しかし、「いだてん」はこれを無視しました。私は見ていましたが、この「フジヤマのトビウオチームの派遣」の件は、マッカーサーの許可を英断として捉えるだけで、平沢和重が「ところで金はどうするのだ」と田畑政治に聞くところで答が無くて唐突に終わっています。答は、和田勇さんが、日本の栄光を取り戻すために費用を全部出してくれたということなのです。何でここまで不自然に話を打ち切るのでしょうかね。
 和田勇さんの活躍は東京オリンピックの実現に繋がります。この日本水泳チームのロサンゼルス遠征の時から、知己を得た田畑政治さんから「東京オリンピックを是非やりたい。ついては協力してくれ。特に強敵デトロイト・サイドと目される中南米のIOC委員を味方に付けてくれ。」と言われ、和田勇さんは奥さんとともに、全くの私費で中南米諸国を40日もかけて行脚し、全てのIOC委員を東京派にすることに成功するのです。1940年の東京オリンピックの時ですら、招致は大変で、副島道正さんらがムッソリーニの所へ乗り込んで譲ってもらったというような息詰まるような曲折があったのに、世界を相手に戦争をし、こてんぱんに負けた日本が敗戦から15年も経っていない時にオリンピック招致で勝利を得るのは、もっと大変だったのではないかと私は思います。それを可能にしたのは、もちろん田畑さん達の努力はあったろうと思いますが、和田さんの献身をおいては考えられません。40日もかけて、自分の費用で夫婦して中南米諸国のIOC委員を訪ね回った和田さんの姿を想像しただけで感動で身震いがします。1940年の東京オリンピック招致をあれだけ劇的に熱心に描いた「いだてん」が、1964年の東京オリンピック招致をまるで簡単にできたように扱うというのは何事でしょうか。別に和歌山のためというよりも、日本人としてこんな感動的な話を是非「いだてん」で取り上げてもらいたいと、「前畑がんばれ」をよろしくと言うこととともに、何度かNHKの会長の所へお願いに行ったのですが、聞き入れてもらえず、残念でありました。

 また、オリンピック話に何故か古今亭志ん生の成長話がかなりの比重で絡んでくるのですが、初めから終わりまで違和感の連続でした。何で志ん生が必要なのでしょうか。メインのテーマが、それほど視聴者の共感を元々得ていないものなら、脚色で色々工夫してというのが、芸術家の仕事でしょうが、東京オリンピックという国民のほとんどが、それを聞いただけでわくわくするような話に、別の要素を入れる必要はありますまい。さらにこの宮藤官九郎という脚本家の持ち味だと思いますが、場面場面をオーバーに面白く、コミカルに描いて迫力を出すという傾向があったと思いますが、これもあまり面白くないテーマの時に、人の眼を釘付けにするにはぴったりの方法かもしれませんが、東京オリンピックという、素材そのものが実に面白く、劇的で、感動的で、しかも視聴者が皆そう思っているというテーマでは、過剰感だけが漂ったと思うのは私だけでしょうか。

 ともあれ昨年、熱心に見続けた「いだてん」が終わり、今年はいよいよ東京オリ・パラ2020の年、本番がもうそこまで迫っています。そういう背景のもとに見ると、前述のように文句は多々あれど、いい企画をNHKはしてくれたと思います。最終回の田畑政治さんの台詞が耳に残りました。「これでオレのオリンピックがみんなのオリンピックになった。」
 2015年の国民体育大会、全国障害者スポーツ大会、2019年のねんりんピックと大会の成功に心血を注いだ身としては、それぞれの大会の大いに盛り上がった開会式で涙した感動と同じでした。嘉納治五郎さんや田畑政治さんをはじめ多くの方々の涙と汗の結晶である東京オリンピックの感動が、もう一度東京オリ・パラ2020としていよいよ始まります。色々と思うことはあっても、和歌山県をあげて東京オリ・パラ2020に協力します。

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