新型コロナウイルス感染症対策(その16)-和歌山県の緊急事態措置-

 4月16日政府は日本全土を緊急事態措置の対象地域に指定しました。突然のことで「えーっ!」と思いましたが、政府の見解を聞いてみると、感染が人の移動で大都市から地方へ拡がることを防止するためのもので、特に人の移動の多いゴールデンウィークを控えてのことだとのことであるので、なるほどと評価をしているところです。

 この決定により、和歌山県でも法に基づく緊急事態措置をとらなければならないことになりました。これまでも、和歌山県では二弾にわたって、県民の皆さんへの感染防止のためのお願いを発表してきましたが、法律の対象地域になったことによって、法に基づく緊急事態措置を改めて決定すべく、4月17日新型コロナウィルス対策本部会議を開催し、以下のような緊急事態措置を決定発表しました。

 法律上の義務は生じますが、法律は何も和歌山県がこれまでの7都府県と同じ措置をとれとは言っていません。それぞれが考えてやりなさいと言っているのです。今回は大事なことは私は2つあると思います。1つは和歌山県のおかれた実態、もう一つは政府がわざわざ全ての都道府県を対象にした意味であります。
 実態はこの間4月12日に県民の皆さんへのお願いを発表した時と変わっていません。感染はばらばらと出ていますが、和歌山県、和歌山市当局の人々、医療関係者の大変な献身によって何とか拡大防止のコントロールが出来ている状況にあります。自粛要請が全く聞かれていないということでもありません。しかし、政府の対象拡大の意味は、ひとえに県をまたがる交流の抑制でありますので、今回決定した法に基づく緊急事態措置の内容は前回の4月12日の発表内容に、県をまたぐ交流をもっと抑制するような部分を追加したものとさせていただきました。具体的には次のとおりです。

 第1は外出を出来るだけ自粛して下さいということです。いわゆる三密(密閉、密集、密接)を避けていただくことはもちろんですが、それ以外でもよく言う不要不急の外出を避けていただくことを、「今日どうしても必要だという場合以外は外出を先送りして下さい」という表現でお願いしています。もちろん食料の買い物など生活維持のための活動、散歩や適度の運動など健康維持のための外出まで止め立てしませんが、買い物は許されると思って家族揃って買い物に行きますと、混雑で「三密」が発生しかねないので控えて下さいとお願いをしています。12日のお願い以来の接待を伴う飲食店への立ち寄りの自粛は堅持しますが、そんなに人が集まっていないという県内の実状からして、東京などのように営業自体をやめて下さいという営業自粛はまだ必要は無いと考えました。
 それに大事なことで、従来から申し上げていることですが、特にこの際も強調したいことは、多少の発熱や咳などがある人は是非無理をして仕事をする、用事に行くなどは止めて下さいということです。どうしても責任感の強い人が多いので、そうなりがちで、仮にこの方が感染していたら、影響が広範囲になります。家にいらっしゃるか、せいぜいクリニックに診てもらうだけにして欲しいと思います。クラスターが発生するときは大体は体調が悪い人が無理に出勤して感染が拡がったというケースです。

 第2は県外との交流の抑制です。4月13日、14日頃から大阪府と兵庫県で緊急事態措置が出され、府民、県民は府県外への移動を自粛せよ、かつ、接待を伴う飲食店やパチンコなどの遊興施設は営業自体を自粛せよという呼びかけがなされていましたが、それでも観光客や買い物客がより安全な和歌山へ流れてきている、特に、大阪府などでパチンコ店が営業を休止したので、和歌山のパチンコ店に押しかけてきて問題だという声が上がりました。京阪神にお住まいの人は、平素観光立県和歌山の大事なお客様ですので、あんまり無礼なことは出来ないと思いつつ、その窮状を、大阪府吉村知事、兵庫県井戸知事に訴えたところ、すぐお二人とも理解をして下さって、記者会見で和歌山のパチンコ店などが開いているからといって行ってはいけませんと言って下さって大変感謝をしています。その時は、この発言を前提に、これを使いながら、各店すべきことを考えてやって下さいと申しておりました。また、観光業界の方は、これを前提に新しく予約を取ることは止めましょうと言っておりました。
 しかし、明らかに県をまたぐ交流の抑制は、フェーズが変わりました。観光でも、遊興でも、仕事でも、通学でも県をまたいでの交流を自粛をしようというのが国の方針でありますので、県をまたいでの交流の抑制を大きな項目として立て、県民の皆さんに県外に出ることを自粛するようお願いするとともに、他県から入ってくる人にも自粛を呼びかけることをお願いすることにしました。
 これが励行されますと、更に経済に打撃が加わりますが、感染の防止という現下の大問題のためにやむを得ないと県民の皆さんもご理解を下さるようお願いします。
もう一つの重点は通勤におけるテレワークの推進です。既に4月12日の呼びかけに際しては、大阪府などがテレワーク70%以上を呼びかけているのだから、和歌山から大阪に通勤している人も勤務先に出来るだけテレワークに切り替えるよう働きかけをして下さい。上手くいかないようだったら県に申し出ていただいたら、大阪府や近畿経産局を通じて先方の勤務先に一般的なお願いをしますという呼びかけをしました。これも吉村知事が私のお願いに対して大変好意的に取り計らってくれ、記者会見で広く言って下さったほか、大阪府の本件の相談担当窓口も教えてくれました。
 しかし、この点も事態が進んできていますので、県内の通勤においてもテレワークを強力に推進して下さるようお願いをすることにしました。また県庁においても、従来から大阪府の感染が深まっている地域に住んでいる職員は原則在宅勤務ということにしていましたが、県内に住む職員にもテレワークの範囲をうんと拡大することにしました。

 第3に、集団生活を行っている施設へのお願いです。
 高齢者施設、障害者施設などに感染が及ぶと大変なことになりますので、病院の院内感染と並んでもっとも恐れています。
 そこで、少しでも熱など異常を認める従業員などは休んで下さいとか、食事はビュッフェ方式は止めて下さいとか、施設内で少しでも発熱などが出たらすぐ保健所に言って下さいとか面会は遠慮するか、どうしてもと言うなら施設外でやって下さいとかのお願いを、これを4月12日に引き続き強く言うことにしました。
 
 さらに第4に県間の人の移動は止めて下さいと政府も全国の自治体も言っているのですが、それでも事情があり、和歌山へ逃げて来られる人、移って来られる人も中には居ると思われます。以前から感染多発地域からの和歌山県への流入者は感染しているリスクも高いと思われますので、流入後2週間は厳重に自宅待機をお願いしているところですが、今回はその相手先を従来の7都府県から13の特定警戒都道府県に拡げました。また、来られた本人も発症リスクが高いわけですから、万一発症したときちゃんと面倒を見られるよう県庁の帰国者・帰省者・転勤者連絡ダイヤル(073-441-2170)に登録しておいてくださいという制度をとり、かつ、新たに来られた人がこの制度を理解していないと困りますから、前からいる近所の方々などが注意をしてあげて欲しいし、それが聞き入れられないときは、上記ダイヤルにご連絡いただければ県が説得に伺いますという制度も作りました。移動の制限が言われている割には結構和歌山に移動して来られた人が居るようで、4月18日現在、既に登録数が800を超えています。2週間経ったら行動は普通の県民並みですが、今度は県外、特に大都会に戻ってもらっては困ります。
 この関係で、この間感染の進んでいる県外から来て、国の公的機関に預けられている人がおそらくそこから出て、おそらく何か良からぬ事をして、検察の施設に入ってから熱などを出したという事例がありました。これはたくさんの人にうつしているのではないかと懸念されたのですが、幸いPCR検査で陰性でした。しかし国の機関の人が、県のルールも守らず、守らせず、自宅待機もさせず登録もしないで外に出ることを許したということは大変遺憾なことで、真っ先にルールを守って範を垂れるべき国の機関の人が何たることかと強く思いました。猛省を促したいと思います。

 また、従来から発表していました学校休業の取組は、4月16日、教育委員会から東牟婁を除く県立学校の休業を5月6日まで延長し、市町村(小中学校の設置者です。)及び私立学校に対しても同様の要請をすることを発表したところですが、和歌山県が法の対象地域となったことに鑑み、この決定を法に基づく措置として改めて決定し、発表を致しました。
 学校の休業については、かなりの数の保護者の方、学生さん自身から休業を求める意見が私の所へ来ています。そのほとんどが学校へ行くと感染リスクが高まる、友達にうつされると嫌だ、命の危険に子供をさらす気か、と言う傾向のものが多いのです。確かに、可愛い子供さんのことで心配をなさる気持ちは痛いほど分かりますが、私たちは、学校における感染リスクを県内における感染状況によって見極め、休みにしたときに生徒さんにもたらされる感染リスクとの比較考量なども考えて、慎重に考えていますので、学校における感染リスクと、ましてや命の危険といった極端な心配だけを念頭に置かれるのはいかがなものかということだけを少し申し上げておきます。まず、今の所、和歌山県は早期発見、早期治療が何とか回っているからでしょうか、はじめに済生会有田病院で発見が遅れて手遅れになりお亡くなりなった方以来、重症の方も少なく、感染即命の危険というわけではありません。子供を殺す気かというのは言い過ぎです。コロナがある程度収束しても、リスクがゼロになることはないか、あっても長い時間がかかるでしょう。その間感染リスクだけを重視して、いつまでも学校を再開しないと、進級できなかったり、子供さんがずっと「コロナ世代」と言われるような学力不足を招くおそれもあります。そういう事を言うと、学力は大丈夫、塾へ行っているからと思って学校は休みにと主張している人が居るとすると、これは大変な考え違いです。不思議なことに塾を休ませろという意見は全く来ていませんが、どう考えても学校より塾の方が感染リスクが低いということは考えられません。大都市の休業要請業種には塾がいつも入っています。現に、和歌山でも、小規模な塾の先生が感染をしていて子供さんの感染が心配をされた例もありました。幸い子供さんには感染していませんでした。それにもし再開したとしても和歌山県では家庭と学校の間で子供さんの健康観察票を往復させて、子供の健康管理を学校のシステムを通じて行うメカニズムを取り入れようとしています。どうしても保護者の方が登校させるのは嫌だとお考えの子供さんは、そうしても不利にならないような工夫をすることにもしています。
 しかし、そういう難しい判断をした結果でも、大阪府も流行っているし、和歌山県でもパラパラと感染者が出るので、今は東牟婁を除く学校再開は難しいという判断を致しました。もちろん東牟婁でも少しでも危険リスクが上がりましたら、いつでも休業を指示することに致しております。

 その他、今のところ何とか維持されている医療体制が患者の増加で持たなくなったときの次のステップのイメージの予告や県庁自体の対応なども含め発表をしたところです。

 繰り返しになりますが、和歌山県における自粛の状況、感染源の状況などから見て、東京都や大阪府や兵庫県などが行っている指定の業の休業要請をする必要は今はないと思っています。しかし、それは絶対しないということではなく、実体面での必要性次第です。必要が出たら実施します。

 この関係で言うと、私は全国知事会のテレビ会合でも申し上げたところですが、業の休業要請をしたら、補償をしなければならいと考えることは間違っていると思います。
休業要請は感染防止上どうしても必要だという時に行う知事の行為ですが、これは感染防止上どうしても必要だから行うことであって、好き好んでやることではありません。コロナ感染は一種の災害です。災害の時、例えば台風や水害で避難勧告をするとか、避難指示をするとかいう時、私たちは避難したら迷惑でしょうから補償を出しますなどは言いません。その対象がお店などの営業体であっても躊躇無くそれを行うし、場合によっては休業を渋っている店には躊躇無く店を閉めて、客を逃がし、自分達も避難せよと勧告したり、指示をしたりするでしょう。それを、コロナがこんなに大変で、その業態の店で感染が媒介されている状況を認識しているのに、止めていただいたら、いくら出しますとは何たることかと私は思います。休業要請に補償が伴うということが是であるとすれば、法律的には、お客さんの方にそういう店へ行くのは自粛して下さいとか、もっと一般的に不要不急な外出は止めて下さいとアナウンスすることも営業妨害で損害賠償の対象ということになってしまうではありませんか。更に言えば、休業要請の対象となっていないホテル、旅館とか観光バス事業とか多くの業界が既にお客さんがガタ減りになっています。接待を伴わない飲食店もそうでしょう。その中で営業の自粛をした先にだけ補償をして、他はしないということはどれだけ不公平になるか考えてみても分かるではありませんか。私は補償ということが是とされるのは、知事がどう考えても不合理な、やりすぎの営業自粛要請をした時だけだと思います。

 繰り返しになりますが和歌山県は現段階では営業の自粛要請はしません。しかし、仮にやむを得ずしたとしても自粛要請の見返りの補償は致しません。

 とは言え、どんな事業、事態でも、皆大切な可愛い和歌山の事業者です。和歌山で仕事をしている人は皆大事な人達です。営業の自粛をしようとしまいと、困っている企業や人を救済するのは私たち行政の大事な仕事です。それはしっかりやります。一店あたり何十万円などというものではなく、本当に必要なら、できる限りの制度を作り、それを利用して県民を救うのが我々の義務です。政府もそういう意味では中々思い切った救済策を作ってくれつつあります。最近は現に営業自粛をした都府県の知事さんに押されて、国も独自の補償(又は協力)にそれぞれの県の国が作る制度から原資を充当して良いですよと言い始めています。しかし、休業補償をした県だけ国の助成金の配分を厚くするというのだったら、それは許せません。
 政府の救済策も随分規模が大きくなりました。事業救済など中々いいのもあります。しかし、現に全員に10万円だ、困っている人だけ30万円だとこの間まで揉めていたように、政府の措置が、予算が通り、体制が出来て、お金が行き渡るまでいささか時間がかかりそうです。そこで、その間のつなぎとして、県としては今本当に困っている人に対して、個人向け、事業者向けにお金を貸す制度をとっくの昔に作って、今でも使えるようにしてあります。従って、それで何とかしのいで下さい。以下の所で相談に応じます。そして、国の制度も使えるようになったらそれら全てを動員して、何とか、生き延びましょう。コロナはいつか終わります。その時までみんなで生き延びましょう。