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仁坂吉伸の思い

風水害とダムの事前放流

2020年06月29日

 久しぶりに新型コロナウィルス感染症対策以外のことを書きます。
 和歌山県は自然災害に度々見舞われるところでありますが、私にとっての一番強烈な思い出は2011年9月の紀伊半島大水害であります。
 台風12号が大変な強さで、かつ大変ゆっくりと四国・中国を縦断し、そこへ吹き込む猛烈な雨が紀伊半島を襲いました。その後日本は2018年の台風7(平成30年7月豪雨)・20・21・24号、2019年の台風19号(令和元年東日本台風)としばしば同様な台風の被害を受けましたので、国民の皆さんはあの2011年の紀伊半島大水害のことをもうお忘れかも知れませんが、和歌山県民にとっても私にとってもあれは身の毛もよだつ経験でした。
 建物被害は、約8,400棟に上り、61人の方が犠牲となられたことは、慚愧に堪えません。
 しかし、あの時和歌山県は早期復旧と復興に県民を挙げて力を合わせて頑張りました。そして、東日本大震災の半年後の大惨事だったのですが、驚くほどの早期復旧を果たし、あれほど破壊されたインフラは、始めに公示された目標通り2012年度末までに95%が本格復旧しました。
 また、あの復旧、復興事業の中で、今でも和歌山県の強烈な武器となっている数々の工夫を咄嗟の思いつきで続々と作って運用してきました。これらは、その後いわば常備軍化されて、これらは和歌山県の資産となっていますが、例えば次のようなものがあります。
1.星1つから3つまでリスク評価をした避難場所(避難所と同一とは限らない)を地震津波用と水害用に分けて発表
2.防災訓練をショー的なものから実戦型に転換
3.Donetを利用した南海トラフにおける地震の実測に基づく津波の到達予測システム構築
4.エリアメール・緊急速報メールを使った防災情報の伝達
5.FMラジオを使った防災情報の伝達とそのための設備整備
6.和歌山県独自の気象予測システムの導入及び避難勧告等の判断伝達モデル基準の策定と市町村への伝達
7.避難場所とそのルートを簡単に検索でき、家族の避難情報等も分かる県独自の防災ナビアプリ開発
8.災害時緊急機動支援隊の常設化(10人×4班×18市町)
9.産業廃棄物処理企業を動員した災害廃棄物処理支援をあらかじめ準備
10.民間企業の力を借りた災害廃棄物としての流木の迅速処理
11.住家被害認定支援要員の養成と派遣体制の構築
12.住宅の耐震助成
13.ホテル、福祉施設など大規模建築物の耐震助成
14.発災直後から救援物資の受入れをコントロールし、必要に応じた配布体制
15.義援金の早期配付
16.空き家、旅館ホテルを借り上げて応急仮設住宅として提供
17.下流の洪水被害の低減を図るため、関西電力と協力して、大雨前にダムの水位を低下させ、空容量を拡大するためのダムの管理運用の見直し(ダムの事前放流)
18.民間企業を活用した県管理河川における砂利の一般採取促進
19.津波避難困難地域完全解消のための対策
20.復興計画の事前策定への着手

 そのうち、ダムの事前放流というのがあります。和歌山県には一級河川の紀の川と熊野川の他、二級河川として県で管理している大きな川が有田川、日高川、古座川、日置川などたくさんあります。実は、県管理の二級河川のうち、名を挙げた四つの川には、上流に大きなダムがあります。順に二川ダム、椿山ダム、七川ダム、殿山ダムであります。このうち、二川ダムと椿山ダム、七川ダムは県の治水ダムという性格と関西電力の発電用利水ダムという性格があり、殿山ダムは関西電力の発電用利水ダムという位置づけです。これら治水ダムは、紀伊半島大水害のもう一つ前の昭和28年の大水害の悲劇を繰り返さないために、当時の和歌山県が県財政を傾けてまで造った立派なダムでして、私は、まあこれらがあるから大
雨が降っても、これらの川は溢れることはないだろうなと思っていました。ところが、紀伊半島大水害の時は、二川ダムと七川ダムは満杯寸前になり、椿山ダムは但し書き放流(大雨が降ってダムの容量がいっぱいになって、もうダムが貯水機能を果たせなくなり、流入量と同じ流出量にせざるをえなくなる操作。この時下流は急に水かさが増え、深刻な被害に見舞われます。)をせざるを得なかったので、下流は大惨事になって人命も含め大変な被害が発生しました。
 自然の猛威の前には、これら巨大ダムも力が及ばない。でも今の和歌山県の体力を考えるともっと大きなダムを造るなんてとても考えられないという状況でした。台風襲来が予想されるときは、県は治水のために確保している空間を目一杯使うため、治水用の水位下限までダムの水を事前放流いたします。しかし、ダムのさらに下部には、関西電力が発電をするために有している水がためられています。ここは私企業の営業用資産ですから、それを抜いて良いわけはありません。いわばアンタッチャブルなのです。しかし、県民の安全を将来起きるかも知れない大雨から守るためには、この利水用の水を抜いて利水用の空間も大雨に備える貯水空間として活用させていただくしかないと私は思いました。

 そこで、たまたま災害見舞いと電力の復旧の報告においでになった関西電力の当時の八木社長に思い切ってお願いをしてみました。「ここは利水用で、御社の商売目的に保有している水だと言うことは重々承知していますが、県民の命を守るために、県が天気予報等から大雨が降って危ないと判断した時は、利水空間の水を事前放流することを許していただけないか。」

 私の予想に反して、八木社長は、即座に「わかりました。命には何事も代えられません」と応じて下さいました。私は大変感激をしました。この時決まった災害時の利水空間の水の事前放流は、その後の詳細な約定契約を交わして発効し、今まで実に50回の事前放流が行われています。
 これによって、和歌山県民の安全は確保され、私は、ずっとこういう理解ある行動をとって下さった関西電力と八木社長(当時)に感謝をしているところです。

 これは中々いい試みだ、国も他県も是非採用したらどうかと、私は、その後国交省や各種知事会議で話をしてきましたが、随分長く、真似をするところは出てきませんでした。
 そして、2018年の7月豪雨が起こりましたが、その中のダムの但し書き放流をせざるをえなくなったダムで、もし、和歌山県のこの方式による事前放流ができていれば、ダムは但し書き放流などしなくて良かったのにというところが現にありました。

 その後、国は重い腰(失礼)を上げ、この度、一級河川にある利水ダムについても、災害予想時に事前放流をするという取り決めを各利水権者と結ぶことになりました。いつも私たちがビクビクしている熊野川には上流に電源開発(Jパワー)の池原、風屋という大発電用ダムがあり、台風の度ごとに国交省に頼んで、国交省からJパワーに事実上事前放流をしてもらっていたのですが、今回から、これが制度化され、これによって、新宮市や和歌山市(紀の川の場合)の市民の安全がより確保できることは嬉しい限りです。

 しかし、それにつけても、このような防災用河川管理の先鞭を付けた和歌山県と関西電力の協力協定と、その際に八木社長が示してくれた勇気溢れる決断は、私は忘れることができません。関西電力の不祥事で、八木社長をはじめ旧経営陣は世の指弾を受け、大変な困難の中におられると思いますが、私は、その不祥事への関与についていささかなりとも弁護するつもりはありませんが、あの決断だけは八木社長への感謝とともに評価したいと思います。

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