新型コロナウイルス感染症対策(その55)-コロナに関する誹謗中傷-

 このところ全国的にコロナに関する誹謗中傷が目立っています。特にネットによるものが目にあまります。コロナに感染した人の名を特定してネットに載せるとか、その人のプライバシーを暴くとか、どこどこの店はコロナ患者を出したぞ、とかそういう情報をネットに上げたり別の人々に拡散させたりする人がたくさんいます。中には、事実と違うことを載せる場合もあるようです。例えば、「Aさんはコロナを発症したが、県も止めろと言っている感染のひどい東京のある所に遊びに行ったからだ。」と行ってもいない所に遊びに行ったことにされてしまうようなケースです。また、コロナに感染した人やコロナの罹患が分かったお店を憎んで、「死ね」「殺してやる」「火をつけてやる」といったことを書き込む人もいます。大体は匿名で行われるのが常です。

 これらは全て違法ですし、可処罰罪になりますし、損害賠償を請求されても仕方がありません。仮に捕まらなくても、ネットの向こうに隠れて、自分の名を名乗らないで人を誹謗したり、中傷したり罵ったり、脅かしたりするというのは人間として恥ずかしい行為です。「名を名乗れ。」です。

 コロナの感染を防止しないといけませんので、和歌山県は、それに必要な限りに於いて、最小限の固有名詞をその当事者の了解の基に発表することがあります。Bという店で複数の感染者が出ていて、そこに来られた方が感染している可能性があるけれど、どんなお客さんが来ていたか、分からないというような場合、お店の名を発表して、「○日から×日までそのお店に行った人は、症状のあるなしに関わらず、保健所にご連絡ください。早速感染の有無を調べます。」といった具合です。
 しかし、例えばそのお店に来ていた人は完璧に分かっているなど感染の拡大防止上必要が無ければ、固有名詞を漏らすことはありません。場所も普通は△△保健所管内としか明らかにはしません。県民には知る権利があると言って聞いてくる人も居ますが、和歌山県では保健医療行政がきちんと機能していますから、感染を拡げるおそれのある人に自由に行動してもらっているわけではありません。感染者はきちんと隔離をして、PCR陰性の家族も所定の日数、家の中に居ていただきますから、その家の前を通ろうと家に近づこうと感染をするおそれは全くないからです。
 それでも知りたいというのはただの好奇心にすぎません。そんな好奇心を満たそうとすると、守るべきプライバシーが守れません。コロナの感染予防という点からは、和歌山県に関する限り、県が発表する情報以外のことを知る必要は全くありません。

 それでも実際はネットを中心とする誹謗中傷が後を絶ちません。ネットに加えて、口コミの井戸端会議的誹謗中傷もあります。会社や学校で感染者や家族がいじめられたり、不当な扱いを受けることも時々報じられています。人の不幸を喜んだり、傷つけて快感を感じたりすることは人の道に反します。
 おそらく、コロナ禍で色々不満がたまってイライラしていることもあるでしょうし、そのために理性によるブレーキが効かなくなっていることから、こういう行為が加速化しているのでしょうか。だからといっていけないことはいけないし、その行為によって思わぬ罪に問われたり、損害賠償責任を負ってしまうこともあるのです。

 こういう事態に対して和歌山県は、新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等対策に関する条例を作りました。内容は、インターネットへの投稿や発言、落書きなどあらゆる方法により、その内容が事実か否かに関係なく、誹謗中傷等を行ったり、不当に名誉を毀損したりすること、また、本人の同意を得ないで、公表されていない情報を不当に公表することを禁止し、投稿した内容を削除するよう県が説示をしても従わない場合には止めるよう勧告することになっています。
 作るからにはかけ声をかける、訓示だけの条例はあまり意味はないし、我々和歌山県庁は、自分たちもちゃんと言うべき事は言っていますよと証明するためだけの行政は「やったふり行政」だから、我々の好むところではない、ちゃんと実効の上がる条例にしよう、悪いことをする人には、県庁が向かっていって被害者を守ろうということにしました。

 また、条例で規定したのは上記のとおりで、罰則もたいしたことはありませんが、もともとからある刑法で、もっと強い罰に処せられる恐れもあります。その内容は以下のとおりです。

 また、当然被害者に不法行為で訴えられて、多額の損害賠償金の支払いを命じられることもあります。軽い気持ちでネットに載せたり、面白がって拡散させたりすることは、絶対にやめましょう。