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仁坂吉伸の思い

新型コロナウイルス感染症対策(その73)-保健所の支援-

2021年09月06日

 和歌山県は新型コロナウイルスの拡大防止は主として保健医療行政で行い、あまり県民に自粛、自粛と無理強いはしない、本当に感染しやすいポイントだけを注意してもらうという政策割り当てを実践してきました。最近ではまた新型コロナウイルスが手強すぎて、頑張っている全員入院もピンチになってきていますから、節を曲げて、一般的な不要不急の外出の自粛と、学校現場、医療現場、県外への通勤通学時の注意、県外観光の抑制など具体的な行動の抑制にも踏み切らざるを得なくなっています。ただ、それでもベースには強力な保健医療行政の頑張りと病院、クリニックなど医療の協力があって初めて何とかしのげるかもしれないということなので、自分の部下も多いのですが、関係者には感謝したいと思います。
 しかし、ヘッドクォーターである県の保健医療行政部局と各地の保健所は、昨年の新型コロナウイルス感染症の発生以来ずっと多忙を極めています。こういう多忙な部局にただ頑張れと言うだけでは、行政のトップ失格であります。この部局の機能が感染症対策の死命を制するということを分かっておらず、頑張れとすら言わないのはもっとだめですが。
 行政に限らず、仕事は維持可能かということが大事ですが、新型コロナウイルスとの戦いのような仕事は、感覚的だけでなく実質的に戦争のようなものです。その戦争で大事なことは継戦能力です。いくら優秀なスタッフがそろっていても、その人々に何でも押し付けていると、そういうスタッフが体を壊したり、意欲を失ったり、精神的に参ってしまったりして、どんどん戦力ダウンになります。そうすると、例えば保健所でいいますと、陽性者を発見したり、その行動履歴を調べて濃厚接触者を割り出したり、それらの人を入院して隔離したりする積極的疫学調査という本来業務が弱体化します。そうすると新型コロナウイルスが見逃されて、感染が広がり、さらに仕事が大変になるというわけです。それが感染の爆発が起こっている地域での実態だと思います。
 和歌山県では、当初、済生会有田病院のクラスターが発生した時、徹底的に封じ込めをしようとしました。本庁保健医療部局の指令のもと地元の保健所が大活躍をして、感染者を発見して、隔離し、治療し、感染を疑われる人を中心にどんどん検査をして感染が見逃されていないように努力をし、約1か月半でこの病院に関する感染をシャットアウトしました。
 けれども、中心になる保健所の諸君に働け働けと言っても仕事は膨大ですから手が回りません。例えば、その間苦情処理や質問に答えなければなりませんし、シャットアウトのためには、必ずしも直接感染を疑われる人以外でも、何かそれを疑う事実が起きていないか、病院以外の疑わしきところを広く調査する必要もありました。
 したがって、保健所の機能を考えて、本当のコアな部分は保健所の心臓部である保健師、看護師にやってもらうが、他の周辺業務はこれらのコアの人材からは切り離すという分業を初日から行いました。例えば、苦情処理は本庁に専用ダイヤルを引いて24時間対応で事に当たらせたし、病院周辺の広い地域をヒアリングして回るのは、保健所の職員以外に振興局や本庁から調査隊を組織してこれに当たらせました。
 以後も和歌山県は継戦能力を高めるためにずっとこのような応援体制を必要に応じて発動してやってきています。新型コロナの初期のころ、感染がひどい大都会の保健所で保健師の方が苦情、質問の電話がひっきりなしに鳴るので身動きが取れないといった報道が流れていましたが、これを見た時人員の拡充や応援や機能分担を考えもしなかった行政トップがいたら問題です。

 和歌山県は、保健所が支所を入れて8つ、他に中核市の和歌山市には和歌山市保健所があります。命令系統が違うと、統合運用は難しいものですが、和歌山県では、和歌山市長や和歌山市保健所の理解のもと、事実上の9保健所の統合運用を行っていますし、入院調整も県当局が中心になってアレンジをしています。和歌山のような地方県はもちろんそうですが、東京都のような大都会でも、保健所単位(例えば特別区単位)で、新型コロナウイルスに対応できる病院がワンセットそろっているはずはありません。和歌山県ではICUやエクモなどを持っている病院も病床も和歌山市など限られた地域に数えるほどですから、無症状から、瀕死の重症まで様々な新型コロナの患者を相応しいところに入院していただくためには、この人はどこ、この人はあそこと県当局による統合的入院調整が不可欠です。これができませんと、重症者にも対応できる病院に軽症者などが押しかけて病床をふさいでしまう恐れがあるのです。したがって和歌山県では、例えば軽症者などは、軽症対応の病院に入ってもらい、病状が悪化したら、重症対応の病院に転院をしてもらうということも常日頃からしていますし、和歌山市で集中的に感染者が出た時は、遠くの病院に陽性者を搬送させてもらったこともあります。また、全員入院を達成するためには、新型コロナは治っているが、体が弱っているといった人を新型コロナ病床から出ていただかなければなりませんが、これが容易ではありません。元新型コロナ患者ということで、非コロナ病院が転院を断る例も他県で多く発生してるようです。そうすると、その人に大切なコロナ病床に居続けていただかなければならず、病床ひっ迫に輪をかけます。そこで和歌山県では、事情を説明して、治ってうつす力の無くなった元のコロナ患者の転院先の病院を複数個所確保してあります。これを後方支援病院と言います。

 保健所に話を戻しますと、県と和歌山市の9つの保健所に対して、次の図のような応援体制を敷いています。

保健所体制の強化の図

 こうして、大変な数の陽性者、濃厚接触者を検査し、隔離するといった積極的疫学調査を保健所のコア要員が続けられるようにしています。このため、私から、特に振興局長に命じて、保健所コア部隊の支援をそれぞれ積極的にやってもらっています。もちろん県庁本庁福祉保健部の作戦中枢にも、スタッフが過労にならないように近隣部局から適宜応援を出していますし、和歌山市長にもお願いして和歌山市役所の他部局から和歌山市保健所に応援をどんどん出してもらっています。私の仕事はこういう全体としての作戦遂行能力の維持を図ることだと思っています。ただ過労で倒れる人が出ないかといつもはらはらしています。

 各振興局からは、1週間に一度、大事だと思うことを知事に直接報告せよという制度があります。その中で2人の振興局長から本件について、報告がありましたので、参考までにそのまま載せます。

【那賀振興局長】

新型コロナ陽性者の増加により、医療有資格者の業務が増大。
振興局事務職員による検体搬送により負担軽減を図っているが、有資格者の勤務が深夜に及び負担が重くなっている。
看護協会からの派遣は現在2名。新たに追加の要請を行っている。
派遣については、健康推進課に快く了解いただいている。
なお、在宅患者の生活支援が必要となった場合、振興局事務職員が担当。体制構築済み。
また、9月から指定難病申請の受付業務が始まることから、健康福祉部で対応している保健所での検体採取時の車の誘導を他部局で実施するよう調整中。

【有田振興局長】

 有田振興局管内は6月中旬~7月中旬は感染者が無しの状況でしたが、その後急増し、保育所内の感染や、学童保育や塾での感染など、子供関連で心配な事例が出てきました。また、湯浅保健所長が、海南保健所と兼務になっているため、午前中に湯浅保健所でPCR検体採取。多い日は、また湯浅保健所に戻っていただいて検体採取という日が続いています。
 当然のことながら、保健所業務は逼迫してきています。そういう状況の中、お盆に大雨警報が出て、職員の警戒体制2号が発出された時、有田振興局の週番部は「健康福祉部」でした。一日だけは踏ん張ってもらいましたが、翌日から急遽体制を変更し、当分の間は「健康福祉部」を輪番体制から除外することにしました。さらに、「本丸→保健所」を守るため、保健所で業務経験があり、捌きができる職員を増援に出すとともに、従来より他部で行っていた検体輸送に加えて、ドライブスルーPCR検査にくる車両の誘導や、コロナ患者輸送にも他部から応援を出すことにいたしました。
 患者輸送については、ワクチン接種を2回完了し2週間経過している他部職員の中から、手を上げてくれる職員が14名もあり、ローテーションを組むことにしました。今、一番大変な保健所を振興局全体で支えます。

 なお、和歌山県は保健所の数が人口比で多いところです。感染症法対策はもちろん食中毒、メタボ対策など必要なたくさんの仕事がありますから、むやみやたらと行政改革の対象にしなかったからですが、和歌山県が保健医療行政で頑張って、感染者数を抑えているのは保健所の数が多いからでしょうと言い放つ人がいて腹が立ちます。ワクチン接種の進捗が日本一迅速だったころ、和歌山県はクリニックが日本一多いからでしょうというのと同じような軽はずみな議論です。確かに保健所数は多いけれど、その保健所に働いてもらって、実際に新型コロナを抑制するためには、大変な苦労と工夫がいるのだぞということを言いたいのです。保健所が多いからと言って感染者を抑え込めるわけではありません。一生懸命努力をして頑張っている地方を都会の識者と称する人が上から目線で「田舎ならではのことだよね」と言っているみたいで、気に入りません。そこである時、具体的にはこの4月ですが、保健所の数と人口10万人当たりの感染者数の相関を調べてみました。感染者の少ない県ベスト10の中で保健所数もベスト10に入る県はわずか4県、島根県、秋田県、福井県、富山県だけでした。感染者が島根県と並んで少ない鳥取県は保健所数ランキングは27位です。(実は和歌山県は保健所数は2位ですが、感染者数は当時関西で大爆発の第四波の影響を受けて22位です。) 結論は保健所がいっぱいあるから新型コロナ感染症の防止ができるのではありません。それをどう使って、疲弊させないで、長く続く新型コロナとの戦いを続けるかです。

 同じことは、ワクチンの接種スピードとクリニックの数にも当てはまります。和歌山県は一時接種スピードが日本一で、特に和歌山市のクリニックを活用した個別接種の力も借りてそれを実現したのですが、テレビのコメンテータなどが「和歌山県はクリニックの数が多いからですよね」などと言っているのを見て、人の苦労も知らないで何を言っとるかと腹が立ちました。クリニックの数の多さからいうと和歌山市に次ぐのは東京23区(全体)です。東京23区(全体)の当時の接種スピードは和歌山県に次いでいましたか。ずっと下位だったではありませんか。当時の接種スピードのベスト10の県中、クリニックの数が10位以内に入る県はなんと和歌山県だけでした。

 我々県知事は新型コロナとの戦いにおいてはいわば作戦本部長ですが、作戦本部長の仕事は、持っている資源を最大限活用して、いかにうまく戦いを導くかという戦略を立てること、そしてそれを実行することです。保健所を生かすも殺すも知事の責任です。

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