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仁坂吉伸の思い

専門家

2021年09月27日

 テレビでニュースなどを見ておりますと、何かの事象が映像とともに紹介されます。そして「この点について専門家は」というナレーションとともに、テレビ局が認定する専門家が出てきて見解を述べるわけであります。専門家として登場する人は何とか大学教授とか何とか研究所の所長とか主任研究員といった人が多いのですが、専門知識がなくても誰でも言えるなあというような内容の話が多く、特にコロナについてはその感があります。私はそれを聞きながら、この人は何の専門家なのかなあ、そんなにその専門分野で業績を上げている人なのかなあと思うことがしばしばです。医師でない人は、医師というと、コロナから感染症防止対策からワクチンのことまで、何でも知っているような気になりますから、「おお、専門家か」と思ってしまうのですが、これは医学だけに限りませんが、最近の学問はどんどん高度化していますので、学者の先生も本当の専門領域はごくごく限られているわけですから、コメントをした領域の専門家なのかなあとすぐ思ってしまうのです。およそ何とか大学教授というのでもっともらしいから、テレビ局の報道の装飾にちょうどいいので使われているのではないかなあと疑ったりします。
 何とか大学教授といってもその専門分野は世界経済とかコロナ対策とかといった広い分野について他を圧する本当の専門的知識があったり、学問的業績のある人は稀有で、ほとんどの人は自分の本当の専門分野の近傍の領域について、さも専門知識があるようにテレビ局のリクエストに沿って発言しているだけではないかと私はよく思います。コロナについては、和歌山県でも目下の最大の行政対象なので、第一線の現場で皆必死で戦っていて、その結果としての知見がどんどん県当局に蓄積されます。また、必要に駆られて本当に信頼に足ると思われる立派な専門家の先生方からその知識を吸収しています。したがって、特にテレビの専門家なるものを専門家として易々と信じられなくなっているのです。もちろん、テレビに出てくる専門家と称する方々の御発言がみんなこの調子で「誰でも言えるなあ」というものでは決してありませんで、「あ、この人ちゃんとわかっていっているな」という人もたくさんおられます。ただ、そういう人はどちらかというと現場で実際にコロナと戦っている人か、ウイルスならウイルス、ワクチンならワクチンとその本当の専門分野における知識を披露されている人に片寄っています。

 考えてみれば、我々は、大学の先生方は皆、圧倒的に何でも知っている学問の専門家に相違ないと思って大学に入学するわけですが、入ってみたら玉手箱、何だこの先生はという人もいることを発見するわけです。それと同じことを私は今テレビニュースのコロナの専門家で追体験しているわけであります。ただ問題は大学に入ってみないと、そして授業を聞いて少しはまじめに勉強してみないと教授の真贋などわからないように、コロナ対策を第一線の現場で担当している人以外の一般の国民は、テレビで「専門家は」と振られて喋られるその見解をそのまま信じてしまうことも容易に考えられます。免疫学、ワクチンの本当の専門家である宮坂昌之先生は、その近著「新型コロナワクチン 本当の『真実』」の中で、このようなマスコミのリテラシーに欠ける報道態度を嘆いておられました。

 同じことは、ワクチンに関する「嫌ワクチン本」の著者が有名大学の教授などという肩書を持っていたりすると、中身を吟味する前に何とか先生もこう言ってらっしゃるから間違いないのだと信じ込む場合にも見られます。
 同じことは、話は飛びますが、IR反対の人が「何とか大学の先生がIRは賭博禁止の刑法違反だと言っているのですよ。それを推進するなんて」と言われた時にも同じことを感じました。賭博禁止の刑法の規定の特別法たるIR基本法で、次に続くIR実施法に従って認められるIRならば違法状態を解除すると既に法律ができているのにです。
 また話のレベルは違いますが、反ワクチンの信者がネットのフェイク情報にすぐ影響されてしまうのも、そのフェイク情報にちりばめられた一見専門家の語る専門知識の故でしょうか。

 こういうのに惑わされないためには、専門家なるものの肩書に惑わされて、その発言を盲信することなく、少し難しくてもちゃんとデータや最新の研究成果で立証して立論を展開している人の本や論文を読んで、頭を鍛えることが必要だと思います。
 その時私はいつも「ほんまかいな」と「なんでや」というキーを自らの頭の中に置いて、本や論文を読みながらそのキーを時々発動させて、チェックすることにしています。また、自分が立論を展開するときも、読んでくれる人や聞いてくれる人が「ほんまかいな」「なんでや」と尋ねるだろうなあといつも思って、それに耐えるようにデータで実証し、論理を使って主張をすることにしています。テレビに「専門家」として登場し、誰でも言えるようなことを、しかも結論だけ言って、データや理論で論証しない人と同じと思われては嫌だからです。

 しかし、それにしても、そうではないニュースや情報がいつも大量に流されています。その情報にさらされていると、私のような県知事が一生懸命説明していることより、全国放送で流されるテレビの論調やテレビ局の専門家の言うことに信をおいてしまう人が和歌山県民の中にだってたくさん生まれてしまうだろうなあと、少し暗澹とした気持ちになります。

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