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仁坂吉伸の思い

和歌山市の水道橋落下事故について

2021年10月18日

 令和3年10月3日、私にとっても驚天動地の大事件が起こりました。紀の川にかかっている水管橋が崩壊し、そこにかかっていた大径90cmの水道管2本が折れ、これに頼っていた和歌山市の紀の川以北の6万世帯、13万8千人の方々に水道水を供給できなくなってしまいました。

 はじめその報告を受けた時、そんなことが起こるのかと思ったのですが、そんなに多くの世帯がいるのなら、きっと別のルートで水が供給されて、何とかしのげるのではないかと思いました。ところが現実には、和歌山市の紀の川南岸の加納浄水場に頼っており、紀の川以北への水の供給はこの浄水場の水を、折れた2本の水道管で全部賄っていたということがわかりました。当分は高台にあるいくつかの貯水池に貯まっている水が供給されるのですぐ断水はしないが、いずれその水が枯渇すると、完全に断水ということでした。

 水道行政は市町村の仕事なので、和歌山市の問題なのですが、県も我がこととして対処しなければなりません。早速、県庁のプロ集団、水道、土木、危機管理などの幹部を市の本部に差し向けて、必死で対処策を探っている尾花市長につけるとともに、とりあえず給水車が大量に要りますから、水道のスキームで関西の多くの市町村から、また、県内の市町村あるいは自衛隊などの給水車にどんどん来てもらって急場をしのぐことにしました。
 次は、応急にどうやって復旧するかです。このポイントは「早く」ですから、すぐに水管橋の隣の県道の六十谷橋に臨時の水道管を走らせようということになりました。通水している水道管は重いので、交通を続けていては、交通車両の荷重と水道管の荷重がかぶさると橋の強度が保てないということになり、当面この橋は通行止めということにしました。交通の障害も起こり、渋滞も発生して、市民の皆さんに大迷惑をかけるけれど、水が出ないよりはましだというのが結論です。
 ところが、次に問題になったのが大径管の手配がすぐにはできないということです。何年か前、瀬戸内海で、水道管をぶら下げている橋に船がぶつかり、大径管が損傷したことがありました。その時、直そうにも別のラインを作ろうにも大径管の手配ができず、極めて長い期間復旧ができなかったことがあるそうで、このことを覚えていて、この大径管の手配が大変ですと言ってきてくれたのは、国土交通省から出向してきてくれている安部県土整備部長でありました。その時地元も国もどれだけモタモタしたかを教えてもらったので、これは、経済産業省からお願いをしてもらうしかないと思って、早速経済産業省の藤木製造産業局長に電話をしてお願いしました。経産省では早速、産業界にあたってくれ、元通りの90㎝口径管はなかったが、70㎝口径管で、工事に必要な約600mあまりの資材を手配することができました。経産省やメーカーにはずいぶん無理を言ってご迷惑をかけたと思いますが心から感謝します。
 また、国交省近畿地方整備局は、技術支援をするチームをたくさん送ってくださり、大変にお世話になりました。
 そこで、10月6日から、すぐ六十谷橋への仮設の工事が始まり、24時間ぶっ通しの工事で、10月8日夜、奇跡的なスピードで、応急復旧工事が終了し、10月9日からの給水が開始されたのでした。その後も含めて、全国から168台の給水車が集まってくれました。松井一郎大阪市長率いる日本水道協会関西地方支部のご協力で全国から来てくださった方々、それに給水車を20台も出してくださった信太山の連隊を中心とする自衛隊、もちろん県内から応援に来てくださった給水部隊の皆さんに心から感謝します。

 こういう時は、司令塔は一つでないといけません。水道橋の事業ですから司令部は市の災害対策本部、最高司令官は尾花市長、したがって、県のプロ集団は市の本部に詰めていて、全面的に市に協力をせよ、尾花市長の命に応じて行動せよ、いちいち知事の私の指示を仰ぐ必要はないと命じました。かくして、一応の応急復旧はできたのですが、仕事はこれで終わりというわけではありません。

 本格復旧はこれからです。これが終了するまでは六十谷橋をずっと通行止めにしないといけません。市民の皆さんの不便は続くのです。このため本格復旧は早くしないといけません。2011年の台風12号の時に、本格復旧は一年半で95%完成させると宣言して、しゃにむに作業を急いだのは、工事期間が長くなることに伴う県民の皆さんの不利益を最小にしようとしたからですが、今回も同じ発想でいかないといけません。
 急ぐとともに大事なことは、水道という大事なインフラが今回のように不慮の事故が起きた時、一挙に断水というようにならないように粘り強い構造を持つようにしておかなければならないということです。こういうことをリダンダンシーといいます。そもそも昔は和歌山市は紀の川以北にも浄水場があって上流から水を引いて、そこで浄水をして水道水を供給していたそうです。もしその構造が残っていたら今回のように全戸断水ということにはならなかったでしょう。しかし、経済的な採算を考えて、現在のシステムに統合したのだそうです。財政も大変ですから、経済的合理性も追求しないといけませんが、こういうリダンダンシーの確保も大事な視点です。和歌山市は、市長のもと、どういう構造で、しかも早く本格復旧を終えるかということを決定して動き出さないといけません。このため、県も国とともに最大限の協力をしていく必要があります。

 考えてみたら、県のしなければならないことはこれだけにとどまりません。全県で様々な種類のライフラインがありますが、これらのハードウェアの点検をするとともに、仮にどこかが切断されても全体的には他のラインを使ってカバーされるようになっているかというリダンダンシーの点検が必要です。ライフラインの構造上の点検です。
 そのジャンルも、水道のみならず、道路、河川、海岸、港湾、下水、電気、ガス、ため池、公共交通、通信網、放送局など多岐にわたります。このうち、河川、海岸、港湾、下水、ため池などはハードウェアの安全性の点検で足りるでしょう。しかし、水道、道路、電気、ガスなどは、加えてネットワークの構造的な脆弱性がないかどうかの点検も必要です。しかも、この敷設、管理主体も、国、県、市町村、民間と多岐にわたります。県が中心となって声をかけて力を合わせて点検をしないといけません。すでに県では道路の改良や整備に当たってはこのようなネットワークの構造的リダンダンシーを保てるように考えて整備計画を立てています。また道路、橋梁、トンネル、港湾、河川、ため池などのハードウェアが傷んだところがないかどうかは既に点検に入っていて、ある程度強化にも着手しつつあります。しかし、それ以外の点、ほかの主体が管理しているところも、この際ハードウェアの強度点検とネットワークの構造上の脆弱性の検討をしておかなければならないでしょう。この大作業の司令官は細川危機管理監に頼みました。
 それぞれの施設の所管部局に号令をかけ、協力をしてもらいながら、11月には点検を一応済ませ、12月から1月にかけてそれに基づいて対応策を整理してもらう予定です。その結果の改良工事などは順番を経て着実にということになるでしょう。でも、ひょっとしたらその結果、緊急に着手する必要が判明したら、少なくとも県所管のものについては早速予算化をし、2月県議会に提案していきたいと思います。

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