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仁坂吉伸の思い

新型コロナウイルス感染症対策(その78)-最近における3つの話題-

2021年12月09日

 新型コロナウイルス感染症は、幸いなことに日本では大変鎮静化し、感染を必死に抑え込んでいた主として地方の各県(和歌山県も一応この中に入れていただいていると思います。)ばかりか、感染が拡大して医療崩壊という状況になっていた大都会でも、感染者数がずいぶん減りました。その結果、一部では新型コロナ感染症の患者さんを救うことができなかったほど逼迫していた病院の環境も楽になっていると思いますし、各地の保健所、その上で指令を出しているはずの各県の保健医療行政当局も一息ついていることと思います。
 一方、日本とは違って、日本が第五波の感染の最盛期のころ、ワクチンで先行して、感染がずいぶんと落ち着いているなあと思われた欧米諸国、それに韓国をはじめアジアの各国で逆に感染が拡大し、ドイツなどでは今までの最多の一日あたり感染者を出しているような状況となっています。そこへもってきて、南アフリカにおいて今までの変異株とは異なるオミクロン株が発生して、ずいぶん感染力が強そうで、南アフリカはもちろん世界各国にこの株の拡散がなされそうだということで、世界中が対策に大わらわとなっています。

 そういう中で、このところ、あまりにも多忙で、このメッセージに書けなかったいくつかの点をまとめて申し述べたいと思います。あれれ、どうしたのということと、最近の政府や専門家の政策の方向性について思うことなどであります。

その1 最近における政府のコロナ対策の基本線について

 和歌山県は保健医療行政が必死で頑張って、積極的疫学調査に奮闘し、陽性者全員入院体制を最後まで死守しましたが、その結果、逆にこの病気の経過や、感染がどこで起きたかとかワクチンがどのくらい効果があったかということがよくわかっています。感染者はこれまで5,000人強ですからサンプル数はそう多くありませんが、そのデータから、上記のことが統計的にわかります。他では陽性者の捕捉と病人の看護治療が間に合っていないところがありましたのでデータを全部とれていませんし、それはとりもなおさず国全体でもデータを取り切れていないということでありますから、和歌山県はこのような統計値で新型コロナ感染症の説明ができる日本で唯一の機関ではないかと思います。保健医療部門のトップの野尻孝子技監(医師)が保健所への指令や全県的入院調整の指導をする傍ら、患者の治療データなどを丹念に記録して、統計化してくれているからです。積極的疫学調査や入院調整の戦場の中で、これをきちんとやるということは職員の疲労を考えるとしのびないところもありますが、行政はすべからく、現実に則して論理的科学的に行わなければならないわけですから、よくやってくれたと思います。その成果は時々取りまとめて、新型コロナ感染症の病状の実例データとして県のホームページに公開していますが、行政、医療関係者、マスコミも含めてどのくらい参考にしていただいているでしょうか。このような治療データにも立脚することなく、政府にアドバイスしている最高の専門家であるべき人たちが、私に言わせると、データや科学的知見によって裏打ちされていないことを、思い込みと決めつけで、いろいろと言っておられ、それがマスコミを通じて増幅して、日本全体に同調圧力となったということに私は大変批判的であります。
 このデータによれば、和歌山のような人口の少ない地方では、感染の主力は飲食でもなければ、観光旅行でもなく、ましてや夜中の飲食街はもともと少ない客がもっと減って、酒を出すな、時短をしろなどと言われなくても、それはいつも何の根拠があって言っておられるのかと苦々しく思っておりました。

 しかし、ようやく、政府もそういうことに気がついてくださったようです。私も関西広域連合長という立場で就任早々の岸田総理に、人流だけに頼っていてはいつまでたっても問題の解決にはなりません、保健医療行政の再建とワクチン接種の加速化がポイントだと思います、とデータに基づいて説明に行きました。また、厚生労働審議会が当県のデータと対策の実態を開陳してほしいと野尻技監に要請があり、何度かそういう情報提供をいたしました。

 その結果かどうかわかりませんが、このところ、人流抑制一点張りであった政府の新型コロナ感染症対策も多様になってきたと思います。岸田総理の演説などにもそれがうかがわれますし、厚生労働省からこのところ各県に対して、今までになかった積極的疫学調査、保健所機能の充実、病床数の拡充、病院に入れなかった陽性者へのケアの方法など、様々な指令が来るようになりました(注)。いいことだと思います。私はこの一年半、和歌山県でそれを実践しつつ日本のためと世間に向けてそればかり言い続けてきましたが、ようやくわかってくれつつあるかという気持ちです。ただ、新型コロナ感染症のごく初期には、こういう点もよく考えておられた厚生労働行政(中には4日間37.5度以上の熱がなければ医療機関に行ってはいけないというような、完全な誤りもありました)が、第二波あたりから完全に人流抑制一点張りになったように感じるのですが、このことさえなかったら、日本の新型コロナ感染症との戦いももう少し違ったものであったろうにという悔いはあります。

 最近の政府の指令に従って、和歌山県でも努力していることを一つ述べます。新型コロナ感染症の病床の拡充です。全員入院を死守した唯一の県である和歌山県もどのような変異株が襲ってくるとも限りませんから、政府の指令に従って対応病床数とそれを補うホテルの新型コロナ感染症対応部屋数の確保をいたしました。第五波の最盛期で病床605床、ホテル151室に対して、今回は病床620床、ホテル170室にします。(ただし、和歌山県のホテルの使い方は、病院で病状が安定化したが、まだ退院基準を満たしていない患者さんを、感染拡大期に病床不足が起きそうな時にホテルに移ってもらう「出口」用を想定しています。もっとも、さらに感染が拡大した時に「出口」のみならず「入口」で使わざるを得ないことも想定し、その時のケアシステムも考えてあります。さらにそれも突破された時の仕掛けもいろいろと検討しています。要は絶対に感染者を放置してはいけないということです。)

その2.世界の感染状況の比較とワクチン

 次の図は日本を含む先進諸国のこれまでの感染状況です。この図は同じ目盛りですから、諸国の感染の国際比較とそれぞれの国での感染の推移がよくわかります。

図1 世界の感染状況の比較

 まず、同じ先進国でも日本のコロナ感染が随分少ないということがわかります。日本でヨーロッパ並みまたはそれ以上の感染があったのは、日本における第五波の時だけで、あとはヨーロッパの国々よりも桁違いに感染が少ないのが現実です。これは何故か。それはおそらく彼我の何かの違いによるものと思われますが、その違いは何なのでしょうか。一部の方は、日本人の極端に高い衛生意識のためと言うし、一部の方は土足文化がないからと言うし、一部の方はBCG接種のせいだとか言います。しかし、私は日本に感染症法と保健所があり、欧米にはそれがないからと、もう既に昨年の夏から言っているのですが、そう言ったら感染症法の運用、保健所の機能不全を招いている自治体や厚生労働省の監督責任になると考えられたからか、あまりに人流抑制一点張りの対策に幻惑されてしまったからか、あんまり省みられることはありませんでした。
 しかし、このことは日本でも感染症法に沿って保健所が大活躍している県と大混乱している県とで感染の程度が大いに違うことで明らかだと思うのです。それでも大都市と田舎で話が違うだけだと言う人もいるでしょうが、それでは、人口がどこへ行ってもパンパンの同じ東京23区でも、感染を少なく抑えている区とそうでない区とでその区の保健所の健闘ぶりと区長さんの方針、努力、発信の違いを見たらそういえばそうだなあと多くの人々は思ってくれるはずです。(もっとも私に言わせれば、区ごとに異なる感染症法の運用をしてバラバラというのはそもそもおかしく、都レベルで統合システムを作って運用すべきだと思います。)

 この図から見えてくる次の問題は、ワクチンの問題です。ワクチンの接種の進捗と感染の減少に高い相関を持つのが、日本のほか、イタリアとスペインです。一方、イギリスとドイツとフランスでは、ワクチン接種の初期、急激に感染が減ったけれど、ワクチン接種がかなり進んだ後、感染の急激なリバウンドが起こり、ドイツでは史上最高水準の感染者数と接種進行が同時に起こっています。これは何故か、はっきり言うとよくわかりません。後で述べる日本でなぜ感染が激減したかということと関係があると思いますが、それを踏まえての対策が日本にとって必要だと思います。と言っているうちにオミクロン株の問題も発生しました。これこそ本当の科学的な知識を持った専門家の方々に是非考えていただかないといけないことだと思います。

 ここで言えることは、少なくとも、イギリス、ドイツ、フランスではワクチンを打った人がかなりいるのに、ブレイクスルー感染がかなり起こっているということであり、日本も何らかの原因でそうならないとも限らないということです。ヨーロッパ諸国ではワクチンの未接種者に対する接種奨励とブースター接種がどんどん加速化していますが、その効果がどう出てくるか、大変興味深いところです。

 ただ、ワクチン接種の進んだヨーロッパ諸国では感染の消長はまちまちでも、死亡者数は明らかに減っているということは明らかであります。少なくともワクチン接種が進んでいなかった2021年初頭の感染時と今とでは死亡者数は段違いに減っています。対策の一番の目的は人々を死から救うことだと思いますので、何といってもワクチンは打っておくべきだと思いますし、3回目のブースター接種も行っておくべきだと思います。

図2 世界の感染状況の比較

 
 図2の目盛りが合わないので別掲としたアメリカとイスラエルの同様な図を見ても、アメリカは最近も死者数は多いが、ワクチン前よりは明らかに減っているし、イスラエルもワクチン接種後の方がリバウンド後の感染者は多くなってしまいましたが、死者数はワクチン接種前よりも少ないということは明らかであります。
 それにしても、日本の現在の感染の減少ぶりとワクチンの接種状況を見るにつけ、2021年の初夏に菅前総理が発出した、「7月末までに高齢者への接種を完了せよ」という指令は大きかったと思います。
 和歌山県はその前からきちんと接種体制を敷いていましたので、そんなことは国がワクチンを配分してくれればお茶のこさいさいであったのですが、2021年初夏の頃はすでに接種を終えて、これから心おきなくコロナとの戦いに乗り出してくれるはずの全国の医療関係者がそれぞれの県の接種になかなか協力せず、マスコミの報道も「うち手がない」というものでした。それは本来おかしいことで、現に和歌山県では誠心誠意説得した結果、多くの医療関係者が協力してくれることになっていたのです。この「うち手がないので打てなくてもやむを得ない」という風潮を覆したのが、前総理の強力なパンチであって、それで全国が動き出しました。その結果、果たして何人の方が新型コロナ感染症による死から免れたかと想像すると、我々日本人はせめてこのことだけは菅前総理を評価し感謝しなければならないと私は思います。

その3 何故日本において新型コロナウイルス感染症は沈静化したか

 その1で述べたように、新型コロナウイルス感染症対策で欧米に対して本来優位にあるはずの日本ですので、何らかの原因で新型コロナウイルス感染症が収束し始めると、感染症法と保健所の機能が効いて、感染の鎮静化は進みやすいということは容易に想像できることです。
 しかし、どうもこの減り方は尋常ではない。完璧すぎる感じがします。新型コロナウイルス感染症の鎮静化のプロセスで人流はどんどん増えていましたので、人流の動向でこれを説明することは、もちろんできません。感染症法に基づき、保健所と県の保健医療当局が頑張り、ワクチンがどんどん接種されるようになったことは事実ですが、どうもそれだけではないのではないかと思うほどの減り方です。
 そこで何故日本において新型コロナウイルス感染症は沈静化したかを私なりに考えてみました。もちろん私は専門家ではありませんので、本当に信頼できる専門家にお聞きしながらのことです。
 この鎮静化が始まったとき、その原因をめぐり、全国知事会会長の平井鳥取県知事と意見が異なりました。新型コロナウイルス感染症との闘いでは鳥取県は最優等生の一人ですし、いつもその対応について、平井知事と連絡を取らせていただいています。大概は意見が一致していますが、この時は異なりました。私は新型コロナウイルス感染症の収束はワクチン接種の進行で説明できるのではないかと言ったのに対し、平井知事はウイルスが弱いほうへ変異したのに違いないという意見でした。私はそんなに都合よく変異などしないのではないかと思っていたのですが、どうやら平井説の方が正しかったようです。

 この急減を説明するのに、まず有名な感染症の数理モデルがあります。1927年にKermackとMcKendrickによって定式化されたものなので、ケルマック・マッケンドリックモデルと言います。これにワクチン接種の要素を加味いたしますと、次のようになります。およそ人々をSとIとRに分けます。Sは非感染者、Iは感染力を保有している者、Rは回復者や、免疫保有者など感染力のない者なのですが、SからIに移る時感染をさせる率がβ(感染伝達率)、IからRに移るときの回復の強さがγ(回復率)、さらにワクチンができますと、SがIを経ないで直接Rに行くことがあり得ますから、これを感染回避率νというふうにおきます。これらを図示するとこうなります。

図3 モデル図

 そしてえらい専門家は、これらを式にして、実体のデータと回帰させて、感染がどうなるかを計算します。そういう難しいことを捨象して簡単に言うと、感染が進みますと感染者が増え(S→I)そのうち回復者が増えてくると(I→R)感染が収まるわけです。

 その際マスクや換気、人流抑制などの感染予防策によりβ(ベータ)を小さくすると、Iが増えにくく、ワクチンをガンガン打つと、ν(ニュー)が大きくなってIが増えなくてもSがRに移り、Iが発生しても、早期検査、早期隔離によって感染性期間が短くなってγ(ガンマ)が大きくなるとIの拡大を抑えつつRにスムーズに移ります。信頼できる専門家の先生も、少し前までは日本については主として感染予防に努力している中でワクチン接種がどんどん加速したことによって感染が収まっていったもので、古典的なケルマック・マッケンドリックモデルで説明できるといっておられました。

 私はワクチンが加速化すれば、こういう難しいことを言わなくても感染収束が説明できると考えました。感染が拡大するのは一人が何人に移すかという基本再生産数(Ro) が大きいからだと思うのですが、これを仮に(Ro) =3と置きます。1人が3人にうつすわけですから、このケースでは感染拡大期には、感染期間(暴露から何日で人にうつすか)毎に3→9→27→81と鼠算式に感染が拡大するわけです。ところがワクチンの接種がだんだんと進みますと、話が変わってきます。ワクチンの効果(感染効果)は和歌山県の全員入院体制の堅持の結果得られたデータから、高齢者で80%、それ以外で90%と判明しています。そして、人口の3分の1はワクチンを未接種で、3分の2はワクチンを接種済みとします。また人口の2分の1は高齢者、2分の1はそうでない人とします。そうすると、感染者が一人が3人にうつすとしてもその3人はワクチンを打っていない人が一人、ワクチンを打った高齢者が一人、ワクチンを打った高齢者以外の人が一人となります。そうすると、うつされる人の数は、ワクチンを打っていない人は以前の1倍、ワクチンを打った高齢者は以前の0.2倍、ワクチンを打った高齢者以外の人は以前の0.1倍なのですから、もともとのウイルスの基本再生産数を (Ro)=3としても、実際にうつる人は1+0.2+0.1=1.3になってしまいます。
 次は、そのそれぞれに、今のような計算が成り立つわけですから、本来は3人が3人ずつにうつして9人になる感染者が、1.69人にとどまります。そういうふうにどんどん世代を重ねていきまして10回感染を重ねて第10世代になった時にどうなっているかといいますと、ワクチンがなかったら3の10乗=59,049人であった感染者が、1.3の10乗=わずか13.8人になってしまうのであります。今の仮定はワクチン接種率が3分の2の仮定ですので、実際日本のワクチン接種率はもっとありますし、高齢者比率はもっと低いですから、ワクチン接種がどんどん進むと、現実にはこれ以上に新型コロナ感染症が収束するので、6万人が14人になるよりもっと感染者が減っていく計算になります。私は、これが感染者減少の一番の説明要因と考えました。

 でも最近になって、海外の動向、すなわちワクチン接種が進んでも、新型コロナ感染症が収束しきれていない国もあるということを考えると、どうも上記のみではいい説明ともいえないと考えるようになりました。そこへ先月の末、「新型コロナの科学」(中公新書)の著者である黒木登志夫先生から次のような極めて説得的なご見解をいただきました。これによると、第五波がなぜ急速に減少したかというと、日本のデルタ株において、ゲノム上の変異を修復できないような変異が起こり、日本のデルタ株は自らの変異を修復して感染力を維持できなくなったので自滅してしまったとのことでした。また、RNAウイルスの複製の抑制に働く遺伝子型が日本人に多かったということも効果があったのではないかと述べられています。詳しくは先生のブログ「コロナウイルスarXiv(34)」2021年11月25日を見ていただくとして、私は大変説得的だなあと思いました。やはり、日本においてコロナウイルスは変異していたことになります。これによれば平井知事の勝ちであります。ただ立派な専門家の中にもこのウイルスの変異に重きを置いておられない人もいます。

 もしそうであるとすると、そこからさらに次のようなことが言えるでしょう。せっかく感染力を失ったウイルスがドミナントな日本の状況を変えるようなことをしてはいけない。すなわち、まだ変異していない、あるいはより強く変異したかもしれない他国のデルタ株を入れないようにしないといけない。さらに新しいオミクロン株が入ってこないように、厳重な水際対策を行わないといけない。
 幸い政府は、随分とすばやく水際対策の強化を打ち出されました。多少の勇み足はあったようですが、それをたたくあまり大局を見誤ってはいけないと思います。少なくとも外国のデルタ株が落ち着きを取り戻すまで並びにオミクロン株の恐ろしさをきちんと見極め、ある程度大丈夫という見地に立ちうるまでの間はそうして欲しいと思います。

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