4期16年の県政運営について(令和4年6月 定例会一般質問)の知事答弁

 本日(6月15日)、県議会において、谷洋一議員の質問に答えて次期知事選に対する私の対応に関して次のように申し述べましたので、以下にお知らせします。

 『尊敬する谷洋一議員から、私の16年間にわたる治績につき多大の評価を頂いたことは、身に余る光栄であります。また、和歌山県政を担う車の両輪である県議会において自らの出処進退をお聞き頂き、開陳申し上げることをお許し頂いたことに、深く感謝を申し上げます。
 就任以来、私は、いささか退潮の見えておりました県勢、県の勢いを盛り返すべく、自らのすべてをかけて、県知事として、県行政に没頭して参りました。その間、ご指摘下さったような成果を上げることも出来ましたが、それは偏に議会のお働きがあり、私に付いてきてくれた県職員の献身があり、そして県下30市町村の首長さんをはじめ、県民の方々が必死で努力された結果だと思っております。一方、和歌山県は数々の難問もあり、まだまだ手放しで楽観出来る状態ではありません。
 そのような和歌山県を引き続き引っ張って、難問を解決し、県を発展軌道に乗せるため、今後も県政を担ってくれという声が山のように寄せられていました。また、最近の和歌山県の政界の動き、政局に関する不協和音によってこの声はますます高まってきております。もちろん一方では、私が退陣した方がよいという意見と動きがあることも、私はよく承知しております。
 
 私としては、このような状況下、特に真摯な続投のご要請の前に心から悩みました。そして悩み抜いた結果、ここに、次のような理由から、私の知事としての勤めは今任期限りとさせて頂きたいという希望を申し上げたいと思います。

 その第一の理由は、多選はあまり好ましくないということです。

 今年の初め頃からずっと、多選を理由に仁坂知事の次期選挙は応援をすべきではないという動きがあることはよく承知しています。実は、この多選は好ましいとは思わないという意見は、私自身が記者会見その他で折に触れて申し上げてきたことであります。多選はともすればマンネリ化を呼び、行政への想像力が失われるリスクがあります。もちろん、だからといっていい加減なリーダーと交代したらもっと事態が悪くなります。従って、和歌山県のためには引き続き頑張った方がいいかなと考えまして、マンネリに陥らないように身を引き締めて、この16年間我が身にむちを打って重責を背負って参りました。今年の春先くらいまではこういう考え方に基づいて、これからもずっと知事をしてくれよと言われる方々には、「はい、がんばります。」と答えて参りました。しかし、自分だけが県政を担える存在だと考えることは不遜だと思うようになりました。

 また、私も選挙の頃は72歳です。まだまだ元気で、現在のところ、365日、24時間勤務の知事の激務に耐える自信はありますが、永久にこれが続く保証はありません。仮にもう一期知事を続けさせて頂いたとしたら、その分このようなリスクは増加します。私が知事にならせて頂いたときは、私は56歳でした。国の役人として、いろいろと大変な仕事をやらせてもらい、その分知見も身に付けていましたし、政界、官界、財界、学界にもおかげさまでいっぱい人脈が出来て、県政に生かすことも出来ました。後で考えてみると丁度いい時期にならせて頂いたと思います。全国の同僚知事もかなり若返ってきており、そういうことから、この際、私がそうであったように、ある程度長く知事を続けてもらうことも出来る人に後を託した方が和歌山県のためではないかと思うようになりました。

 第二の理由は、県政界における次のリーダーを巡る対立であります。
 
 望むらくは皆さんが協力して様々な県政の問題を解決していくべきところ、このような対立は県政の円滑な遂行に禍根を残しかねません。ならば、ここは、当事者である私が身を引いた方が、このような対立が解消されることにつながるのではないか、また、私が次期知事選挙に立候補しないと言明することによって、新しい立派な方が、積極的に名乗りを上げてくれやすくなるのではないか、そのように考えました。

 さらに第三に、大変個人的な理由で申し上げにくいのですが、365日、24時間の知事のフルタイムの勤務を続けるのがつらい事情があります。

 私の家内が、体調が思わしくありません。もう少しそばにいてやりたいと思う気持ちが家内の体調の推移とともに募って参りました。私の職業生活は異常なほどの忙しい毎日でしたが、家内はその間ずっと私を支え続けてくれ、ある意味私の犠牲になってくれました。現在の体調を見るにつけ、あと4年この状態でいることは人倫に悖るなあと段々と思うようになりました。今やめられたら和歌山がどうなるのだ、和歌山県民のために知事を続けてくれという、おそらく多くの県民の期待に応えられないのは申し訳なく、断腸の思いでありますが、県のリーダーは私に替わるよき人が現れる可能性があるけれども、私の家内にとって、夫は私一人しかいないと思うことをどうかお許し頂きたいと思います。

 以上の理由で、私は12月に行われるであろう次の知事選挙に立候補せず、知事としての仕事はこの4期目の任期限りとしたいとの希望を表明させて頂きます。次回以降も私に知事を続けるようにと望まれたすべての方々にお詫びを申し上げるとともに、いたらぬ私をサポートして下さり、ともに頑張って下さったすべての県民の方々に深く感謝を申し上げます。とともに、私などよりもっと優れた、素晴らしい方が現れ、多くの有力な方々がこぞって推し、そして私がもっとも敬愛をする賢明な和歌山県民の審判によって、新たな県政の担い手が和歌山県に登場することを望みます。

 とは言え、私の任期はまだ半年あります。次期選挙に出ないからといって知事としての神聖な勤めに手抜きをすることはありません。難問は山積であります。私はもとより、自分に有利になるからとか、自分の立場を守るためとか、もっと端的に言うと次の知事選に有利になるからといった、自分中心の動機で職務、職責を考えたことはありません。国の役人の時もそうでしたが、知事に就任してからは、自分の職業の客体としての県の将来と県民の幸せのために自分を律して参りました。その私が、次がないからと言って手を抜いているなと言われることはあってはなりません。
 県議会の皆様、どうかこの半年間、変わらぬご指導、ご鞭撻、ご批判、ご叱責、叱咤激励を賜りますように、心からお願い申し上げます。ありがとうございました。』

 以上のとおりでありますが、この議会での意向表明の前に日頃からお世話になっている後援会の幹部の方々にお集まりいただき、事前に申し上げようと考えておりました。
 ところが、報道陣が待ち構えていて、取材がヒートアップし、参加者が私の意向はどうかと問い詰められるという見込みになってまいりました。これが議会の答弁の前にマスコミで報道されますと、せっかく議会でご質問くださることになっていた谷議員はじめ議会の皆様に申し訳ないと思いました。したがって、私が予定通り、事前に意向を申し上げますと、参加の皆様に、「黙っていてください。」「何も語らないでください。」とお願いせざるを得ず、ご負担をかけることになります。そこで、周辺の事情は申し上げたものの、はっきりとした結論は語らずに終わりました。こういう状況になったことをご参加の皆様に深くお詫び申し上げます。

 後援会の皆様、いつも本当にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いします。