不義理をお許し下さい

 知事退任後一ヶ月半くらい経ちまして、ようやく和歌山も東京も身辺が落ち着いてきました。退任日が12月16日でありましたので、その日は県庁で皆さんに温かく見送って頂き、県庁正面広場で、見送って下さった大勢の人々に、直前のサッカーのワールドカップで話題になった長友選手の台詞をまねて、「和歌山県ブラボー」と叫んで機嫌良く県庁を後にしたのですが、その直前半月ほどと直後一ヶ月ほどは身辺整理と引っ越しで多忙を極め、大変な目に遭いました。元々任期一杯は県政の務めをおろそかにしません、めいっぱい働きますと宣言をしてしまっていたものですから本当に忙しくて大変でした。スケジュールはいつもの年以上にぎっしりで、おまけに最期の県庁では執務室から私物を撤去してクリアーにしないといけないし、後者では引っ越し荷物を作ったり出したり、新居で受け取って整理したりと本当に大変でした。引っ越し前日は久しぶりに完全徹夜になりました。新居では暫くは段ボール箱につぶされそうになって寝ていました。おまけに必要な情報が入っているファイルがどの段ボール箱に入っているかが分からず、往生しました。
 その間多くの方から、「大変御世話になったので退任前にお礼に行きたい、お別れの宴でも設けたい」と言う有り難いお申し出があったのですが、全く首が回らず、殆ど全部お断りをしてしまいました。在職中はあまりにも忙しく、とても無理なので、おそらく少し落ち着いた一月中旬以降にお願いできないかと職員に言って貰っていたのですが、まだ、殆どの人とは実現していません。大変不義理なことで申し訳ありません。
 同様なことを直接電話やメールでご提案を頂いた方には、「首が回りませんので少々お待ち下さい、こちらからご連絡を致しますとお返事をしていまして、このところようやくご連絡を差し上げたり、お会いしたり出来るようになりました。これからはご連絡を頂いたら前みたいに待って下さいと言わなくてもすむ情勢になって参りました。それにしても、折角ご苦労さん会をしてあげるという方に首が回らないので待って下さいというのも身勝手で、これも大変不義理なことで申し訳ないと思う次第であります。
 県庁職員に対しても、折角のご厚意にお答えすることなく、不義理を致しました。県庁には部長クラスのサークルである末広会とか、次長クラスの集まりの次長会といった組織があって、時々懇親会があって私とか副知事が呼ばれるわけでありますが、そういう末広会や次長会や知事室のメンバーが歓送会をしてあげると言う有り難いオファーをして下さって日程まで決まっていたのですが、本当にどうにも首が回らなくなりましたので、丁度コロナが爆発してきたこともあって、全部キャンセルしてもらいました。長年苦労をともにしてきた仲間からの折角の好意を無にするようで誠に申し訳ありませんでした。歓送会がなくなった代わりに代表の方が記念品を持って会いに来てくれました。有り難うございました。その際次長会の幹事役の方が「お別れ会でこれを読む予定で作ったのですが。」と言って封筒に入った挨拶状をくれました。帰って読ませて頂きまたまた涙涙になりました。あんまり感激したので、次にたまたま会ったときに「この間の挨拶、感激しました。あれをいつかメッセージに載せていいかなあ」と言いましたら、「いいですよ。どうぞどうぞ。」と言って下さったので以下に掲げます。有り難うございました。またもう一つ知事生活16年の思い出が出来ました。宝物として取っておきます。
本当に多くの方に不義理をしてしまいました。申し訳ありません。

「            親愛なる我らがボス 仁坂伸知事へ

 仁坂知事におかれましては、4期16年の任期を全うされましたこと大変お疲れさまでございました。
 この間和歌山県の行く末を案じ、県勢浮揚をめざし我々職員の先頭に立って昼夜の別なく奮闘されてこられたこと、衷心より感謝申し上げます。
 こうしたことを部下である私が申し上げるのは、非常に僭越ではございますが、和歌山県職員であると同時に、和歌山県民でもありますので、県民からの感謝の言葉として受け止めていただければ幸いです。
 今12月定例会での一般質問において各議員から、あるいは仁坂伸知事自らの答弁で、4期16年の仁坂県政の総括をされておられましたが、ここで改めて振り返りますと、何よりも真っ先にあげられますのが、県民の信頼を取り戻すべく、和歌山県政の救世主のごとく知事の任に就かれ、公共調達制度の改革を進められたことであります。その後、平成23年に発生した紀伊半島大水害の対応についても、常に先頭に立ち我々職員を鼓舞し、迅速な復旧復興に尽力されました。さらに、現下の新型コロナウイルス感染症の対応についても「和歌山モデル」の遂行により、県民の信頼を得られたものと考えています。
 こうした功績以外にも、企業誘致、道路網整備、観光振興、少子化対策、青少年育成、県産品の販路拡大、教育の充実等々枚挙にいとまがない施策の数々について、ここにいる職員それぞれが、持ち場持ち場において、関わることが出来、非常に幸せでありました。
 常に県民の幸せ、県政の浮揚を旗印に、必要とあれば既存のルールを改めるよう声を上げて来られた仁坂知事の姿勢を間近に見ることができたこと、これが我々の財産となり、ひいては今後の県政運用の一助となるものと確信しております。
 時には「ゴリゴリ」と仁坂知事に論理の矛盾を突かれ、あるいはあるいは我々職員にとっては高めに設定されたミッションの遂行にきっと涙するものもいたはずです。(私の実体験に基づくものです。)
 しかしながら、常に綿密な作戦を練って、周到な準備を行い、迅速にかつ的確なポイントをせめて数々の実績を上げてこられた仁坂知事だからこそ、我々も信頼し、一丸となって県行政の推進に努めてまいった次第であります。少しでも仁坂知事の理想、未来図について行けるよう我々職員を常日頃から鍛錬していただいたことに改めて感謝致します。
 (私事になりますが、ごくまれに仁坂知事から「えらい」「よくやった」という言葉をかけていただいた時は、不思議な高揚感に包まれて、よし頑張ろうと思ったことが思い出されます。)
 先日の本会議で仁坂知事は、「この16年間でこれまで和歌山県の発展を阻害してきた要因は取り除かれ、今後の発展の基礎条件の整備を進めることができた」と答弁されていました。我々職員一同は、この言葉を胸に和歌山県のさらなる発展のため、あらゆる方面に網を張り、気を緩めず、「わぁわぁと騒ぎ立て」ながら前進してまいります。もし仮にも「誤魔化しているな」「手を抜いているな」と感じることがございましたら、即座にご指摘いただければ幸いです。
 終わりに、仁坂知事には、勇退されましても、きっとお忙しく日々を過ごされることかと推察いたしますが、時には後進の育成という観点で我々職員に対しご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げますとともに、今後ますますのご健勝とご活躍をご期待申し上げます。   」