藤藪庸一さん

 県の広報の一環として、県のホームページで和歌山の立派な人を知事がその人と対談して紹介する「名人対談」という企画があります。その仕事で、白浜で牧師さんをしながら、三段壁で自殺しようとする人を救い続けてきた、NPO白浜レスキューネットワーク代表をしておられる藤藪庸一さんにお会いしました。
 大変感銘を受けました。まだお若い方ですが、大変立派なお仕事を続けて来られた方だけあって、肩に気負いもなければ、考え方も柔軟で、特にずっと先も周りも見ておられる方にしか言えない言葉を、たくさんお聞きしました。

 その1つが、このところ、国も自殺対策に力を入れてくれて補助金なんかが利用できるようになってありがたいと思うが、それがないと仕事をしないという考えを助長してしまわないか、それに頼ってしまって補助金がなければ続けられないような事を活動のベースにしてしまわないかと恐れていると言われたことです。
 確かにそのとおりで、本来は藤藪さん達が目指されているように、自殺を一度は願った人が、気力と体力を取り戻して、その人が社会の役に立って、自活できるようにすることが一番大事だと思います。補助金に甘えてしまったら、ひょっとしたらいつまでもそれに頼ってしまう構造ができてしまうかもしれません。本当に自活できるということは、自分や自分達の生活は自分たちで稼げるようになるということですから。

 このことを藤藪さんに教えてくれたのは、藤藪さんの奥さんのお父さんだそうです。藤藪さんもえらいけど奥さんもえらいなあと思っていましたが、そのお父さんはもっとえらいのだなあと感心しました。

 藤藪さんの事跡は彼の著作『「自殺志願者」でも立ち直れる』(講談社)に詳しく書かれています。皆さん是非ご購入下さい。それによって、著作料が藤藪さんに入れば、藤藪さんの活動がさらに容易になります。藤藪さん達の作るおからクッキーも、お弁当も、トレーナーも是非買ってさし上げて下さい。しかも、その市場価値を信じる形で。それこそ、藤藪さん達の活動の自活にもつながると思います。

 もう一つ、その著作の中で、藤藪さんは、自殺から立ち直ろうとしている人に、ずいぶん厳しい事も言うと言います。しかし、「それは絶対に見捨てないと覚悟を決めて、叱っているのです。」と言う言葉がありました。この言葉に私は共感を覚えました。
 私も、随分がみがみと、県庁の職員にきつい事を言っています。県民の方々にもお追従は言わないで、言いたい事ははっきりと申し上げています。きつい男かもしれません。しかし、絶対に見捨てないからこそ、そうしているのです。