わが心の誇り 桐蔭高校同級生

 手元に一冊の本があります。「伊勢神宮のこころ、式年遷宮の意味」小堀邦夫著です。著者にお会いした時直接いただきました。2年ほど前知事会で伊勢に行き、式年遷宮を控えて、その準備に大童の伊勢神宮に行き、様々なことを分かりやすく説明して下さった伊勢神宮禰宜がその方です。説明をお聞きして辞する段になってお礼を申し上げていると、「覚えていますか。私もあなたと同じ桐蔭高校の同級生ですよ。」と言われました。
 何せ一学年600人のマンモス高校ですから、同じクラスにでもならないと中々誰がいたか元々知らない人もいます。大変申し訳ない。後で卒業アルバムを見て、「あっ!この人か」と思いました。
 しかし、考えてみると小堀邦夫さんは大変な仕事をしています。和歌山県でも観光振興のきっかけにしようと考えている伊勢神宮の式年遷宮を取り仕切り、対外的な説明を一手に引き受けています。そればかりか日本全国の神宮司庁総合企画室長兼広報室長として、わかりやすく国民に神道を説き、多数の著作をものしていて、この分野で文句なく第一人者でしょう。卒業してからずっと小堀邦夫さんのことを知らなかったけれど、同級生がこんなに素晴らしい活躍をしてくれていることを大変誇りに思います。
 40年ぶりに和歌山に帰ってきて、ふと見てみると、小堀さんに限らず、あの40年前の学友が皆素晴らしい人生を送っておられるのを発見し、本当にうれしくなりました。
 日本の産業技術振興機関として最大のものは、「独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDOと言っています。)ですが、この前の桐蔭高校の同窓会の時そのNEDOの理事という名刺を渡してくれた人を発見して、経済産業省出身の私としてもびっくりしました。和坂貞雄さんです。彼は民間で技術開発プロジェクトのリーダーとして活躍した後、NEDOに転じて、そこで職員の中でトップに登りつめた人です。NEDOの助成を受けて日本中で数え切れないような技術開発が進んでいて、日本の産業の競争力が根本的なところで支えられているのですが、和坂さんはそのほとんどのプロジェクトを実施している企業や現場を訪ねて、生の声を施策に生かしているそうです。中々大組織のトップに出来ることではありません。
 和坂さんに限らず、企業や官庁に入って、これまでの日本の発展を支えてきた人がたくさんいます。会社でも大をなしている人がたくさんいます。東芝の梶川茂司さんはついこの間まで東芝ソリューションの社長さんでした。上田向祥さんは、私より1年後で通産省に入って来て、大活躍をしました。80年代半ばの経済対策は、内需喚起案を上田さんが、対外経済対策を私が、それぞれ担当課の課長補佐として2人で力を合わせて、世に訴え、大蔵省と戦い、政府の対策を仕上げるために働きました。残念ながら、彼は後に脳梗塞に倒れましたが、命をとり止め、リハビリに努めて、頑張ってくれています。
 竹中平蔵さんは言うまでもありません。しかし、桐蔭高校の秀才はよく、仁坂か竹中かと言われますが、これは誤りです。実力テストで一番をとれそうな人はこの2人を含めて20-30人はいたという事を同級生なら皆知っています。そういう皆が俺が1番だなんて下らないことに拘らず、自分の道をそれぞれに追求していたのが、あの時代の桐蔭高校の我々だったのではないでしょうか。
 名前を上げた人はもちろん、卒業してから40数年、我々は皆それぞれの人生を精一杯生きてきたと思います。そんな人々の中で、不思議にこの和歌山でも、同学の方々の中で、人に推され、それぞれの分野でリーダーになっている、あるいはなっていた人もたくさんいます。観光旅館は坂口邦嗣さん、薬剤師は岩本研さん、メリヤスは上野隆主さん、ガソリンスタンドは森下正紀さん、産業廃棄物協会の井川朗さん、小学校の校長会長は津田成章さん、高校の教職員組合長は茂野和廣さん、橋本市民病院長として自らが宿直を勤めながら、過労と戦いながら、必死で地域の医療を守っている山本勝広さん、和歌山のソロプチミストの前会長として社会奉仕に勤しんでいる須佐真理子さん、粉河の地域経済をリーダーとして一生懸命に支えている恩賀要さん、そして同窓会のリーダーとしてずっと努めてくれた岩本隆臣さん、県庁でも、岡本賢司さん、北田佳秀さん、原広之さん、前硲健作さんの4人に部長を勤めてもらいました。(同級生に対するえこひいきではない事は全県庁職員が知っています。)一方では無医村になりそうな高野町の富貴でたった一人の医師として住民の健康を守っている田中利平さん、地域経済と中心市街地の衰退の中で必死に家業を支えている多くの学友、家庭人として御主人を盛り立て子どもさんを立派に育てられたあの時代の多くのマドンナ達…。
 そんな皆さんの中であの高校時代を過ごすことが出来て本当に幸せでした。また、40年にも及ぶ不在から知事として戻ってきた私を励まして、支えてくれている学友の皆さんには本当に頭が下がります。ありがとうございました。そしてまだまだこれからも含めてありがとうございます。